【消費税の課税区分】課税・不課税・非課税・免税取引の違いとは?税理士がわかりやすく解説
質問者
会計入力をするときに消費税の課税区分(課税・不課税・非課税・免税取引)の入力が必要なのですが、それぞれどう違うのですか?
税理士
違いがわかりにくいのですが、課税区分の分け方のルールを一度理解してしまえば、意外と簡単に区分できるようになりますよ。

会計ソフトで仕訳を入力するときや、消費税の申告書を作成するときに、消費税の課税区分(課税・不課税・非課税・免税取引)を分ける必要が出てきます。

インボイス制度が始まって、最近初めてこの作業をしないといけなくなった人も多いはずです。

消費税が課される課税取引はともかく、消費税が課されない不課税取引と非課税取引、消費税が免除される免税取引はどう違うのか?

この違いをきちんと理解できている人は少なく、その都度ネットで調べながら何となく区分している人が多いと思います。

でもこの課税区分の分け方にはルールがあって、そのルールさえ一度理解してしまえば、意外と簡単に区分できるようになりますし、かなり時間の短縮になります。

そこで今日は、この課税区分の分け方のルールをわかりやすく解説していきたいと思います。

課税取引とは?

課税取引とは、その名のとおり消費税が課税される取引のことです。

そもそも消費税とは、商品・サービスの提供などの取引に対して課税される税金です。

商品・サービスを消費した最終消費者が消費税を負担しますが、消費者に消費税を請求して納税する、納税義務は事業者が負っています。

とはいえ、この世のありとあらゆる取引に対して消費税が課税されるわけではありません。

具体的にどのような取引が消費税の課税の対象になるのかは、次のとおり消費税法第4条に規定されています。

☆消費税法第4条(要約文)
→国内において事業者が行つた資産の譲渡等には、消費税を課する。

最初に「国内において」とあるので、国外で商品・サービスを提供した場合は日本の消費税は課されません。

「事業者が行った」とあるので、事業者ではない一般人がバザーやメルカリで商品を販売したとしても、課税の対象にはなりません。

また、「資産の譲渡等」とは、事業として対価を受け取って行う資産の譲渡(販売)や資産の貸付、サービスの提供などのことを言います(消費税法第2条1項8号)。

したがって、補助金・助成金のように、商品・サービスを提供せずにお金を受け取った場合や、対価を受け取らずに無償で商品・サービスを提供した場合などは、課税の対象にはなりません。

要するに、次の4つの要件を満たせば消費税の課税対象となるということです。

課税対象となる4つの要件

1. 国内取引であること
2. 事業者が事業として行う取引であること
3. 資産の譲渡や貸付、サービスの提供を行う取引であること
4. 対価を得て行う取引であること

この4つの要件を満たす取引は課税対象となりますが、100%課税取引となるわけではなく、後ほど説明する非課税取引と免税取引については、4つの要件を満たしていても課税取引とはなりません。

ちなみに、ここでいう事業者には免税事業者も含まれますので、免税事業者から商品を仕入れた場合などは課税取引となります。

この辺りが消費税のややこしいところですが、免税事業者は消費税法第9条で納税義務が免除されているにも関わらず、取引自体は消費税法第4条によって課税の対象になるため、免税事業者から商品を仕入れた場合でも、一部仕入税額控除を受けることができます。

不課税取引とは?

一方で、上記の4つの要件を満たさない取引、そもそも消費税の課税の対象とはならない取引のことを不課税取引と呼びます。

先ほどいくつか不課税取引の例を挙げました(国外取引、一般人の取引、補助金・助成金収入、無償取引)が、他にも判断に迷いやすい不課税取引の例を3つ挙げると次のとおりです。

不課税取引の例

1.給与、役員報酬…労働した対価として給与を受け取っているので、一見課税対象になりそうですが、「雇用」されているだけで「事業」を行っている事業者ではないため、不課税取引となります。

2.株の配当金…株主は商品・サービスの提供を行っているわけではなく、株主としての地位に対して配当金が支払われているだけなので、不課税取引となります。

お金を預けるというサービスを提供しているようにも見えますが、配当金はその対価として必ず支払わないといけないものではなく、商取引のような「サービスの提供に対して必ず対価を支払う」といった明確な対価関係はありません。

3.保険金、損害賠償金…こちらも商品・サービスの提供の対価ではなく、保険事故や受けた損害に対して支払われているにすぎないので、不課税取引となります。

非課税取引とは?

特殊な立ち位置にあるのがこの非課税取引で、これが消費税の計算を複雑でややこしいものにしています。

非課税取引とは、課税対象となる4つの要件を満たしているため、本来は課税されるはずのものですが、さまざまな理由で例外的に消費税を課税しないこととした取引のことです。

例えば土地の譲渡や貸付は非課税取引とされるのですが、その理由は、土地は消費してなくなるものではないので、消費税の性格から課税の対象としてなじまないからだそうです。

金融取引(預貯金や貸付金の利子、信用保証料、保険料など)が非課税取引とされているのも、たしかに資金を動かしてはいるものの、具体的な商品やサービスを消費したとも言い難いので、課税の対象としてなじまないからだとか。

また、居住用住宅の貸付けが非課税とされている理由は、家賃に消費税をかけられたら生活費の負担が重くなるという社会政策的な配慮からです。(したがって住宅ではなくテナントの貸付けは課税取引です。)

病院の社会保険診療や介護保険サービス、社会福祉系のサービス、学校教育などについても、社会政策的な配慮から非課税取引とされています。

会計仕訳でよく出てくる非課税取引は、国や役所に支払う登記や証明書発行などの行政手数料ですが、税金で運営されている国や役所に消費税を支払うのもおかしな話なので、非課税とされているのでしょう。

非課税取引は消費税法別表第二にすべて記載されており、これを限定列挙されているという言い方をします。

別表第二に書いてある、限定列挙されているものがすべて非課税取引で、それ以外の非課税取引は存在しません。

別表第二は見にくいので、主な非課税取引を一覧にすると次のとおりです。

主な非課税取引の一覧

1.土地の譲渡、貸付け
 ※1ヵ月未満の貸付け、駐車場などの施設利用に伴う貸付けは課税取引
2.株や債券などの有価証券の譲渡
3.お札、硬貨、暗号資産などの支払い手段の譲渡
4.預貯金や貸付金の利子、保険料、保証料
5.郵便局など一定の場所で行う切手、印紙、証紙の譲渡
 ※1 場所が郵便局やコンビニなどの郵便切手類販売所、印紙の売渡し場所などに限定されているため、チケットショップなどで購入した場合は課税取引
 ※2 切手は郵便ポスト投函時に課税取引となるが、切手を郵便物の発送にしか使わない場合は購入時に課税仕入とすることも認められている
6.商品券、プリペイドカードなどの物品切手等の譲渡
 ※商品券などを使って商品を購入した時に課税取引となるため、商品券を買ってプレゼントした場合は非課税仕入のまま
7.国や地方公共団体に支払う一定の事務手数料
8.外国為替業務に係る手数料
9.社会保険医療
10.介護保険サービス
11.社会福祉事業等のサービス
12.助産に関するサービス
13.火葬料や埋葬料
14.一定の身体障害者用物品の譲渡や貸付け
15.学校教育
16.教科書の譲渡
17.住宅の貸付け
 ※1ヵ月未満の貸付けは課税取引
(参考:国税庁 非課税取引となる取引 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6201.htm)

免税取引とは?

輸出などの免税取引についても、国内から商品を販売しているため課税対象となる4つの要件を満たしてはいるのですが、最終的に国外で消費されるものなので、日本の消費税は免除されます。

日本の免税店(輸出物品販売場)での商品販売が免税取引とされるのも、外国人旅行者が商品を外国に持ち帰って、国外で消費されるからです。

その他、国内と国外との間で行われる旅客や貨物の輸送(国際輸送)、非居住者に対するサービス提供なども免税取引となります。

なお、輸出免税の適用を受けるためには、輸出許可書や契約書などの証明書の保存が必要です。

なぜ不課税・非課税・免税取引を区分する必要があるのか?

最終的に消費税が課されないという点では共通している不課税・非課税・免税取引の3つをわざわざ区分する必要があるのか?

と疑問に持たれた方も多いと思といますが、この3つの区分によって課税売上割合(売上のうち何%が課税売上になるのか)の金額が変わり、これによって消費税の納税額が変わることがあるため、区分する必要はあります。

ただし、詳しい計算方法は割愛しますが、課税売上割合が95%以上となる範囲内であれば、この区分によって消費税の納税額が変わるわけではありません。

そして、たいていの業種で売上はほとんどが課税取引であり、課税売上割合は95%以上となるため、この3つの区分を間違えたからといって納税額に影響することは少ないです。

また、売上はともかく、仕入や経費支払時の不課税・非課税の区分については、どちらに区分しても消費税の計算には影響しないので、それほど神経質に区分しなくても大丈夫です。

まとめ

このように、消費税の課税区分はまず「課税対象となる4つの要件」を満たす取引と、4つの要件を満たさずにそもそも課税対象とならない不課税取引に区分できます。

4つの要件を満たす取引はほとんどが課税取引に区分できますが、例外的にさまざまな理由で課税しないこととした非課税取引に区分されるものと、国外で消費されるため消費税を免除することとした免税取引に区分されるものがあります。

この課税区分の分け方のルールを一度理解してもらえれば、ある程度は感覚的に区分できるようになっているはずです。

ただし、特に非課税取引は種類が多くて規則性もあまりなく、感覚的に区分するのは難しいので、迷ったら上記の非課税取引の一覧を見るようにしてください。

ここまで専門的で詳しい内容を記事にしたのは初めてですが、こういった原理原則を理解せずに会計入力や消費税申告をするのもかえって効率が悪い気がしたので、あえてしっかり解説させて頂きました。

会計入力時や消費税申告時に、この文章を参考にしてもらえたら嬉しいです。

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