私がサポートしている5人以下の小さな会社の経営者や個人事業主の方々は、まだ資金繰りに余裕がないことも多いです。
そこで、少しでも税金を払いたくないので、節税のやり方を教えてくださいとよく言われるのですが、私はあまり節税をおすすめしていません。
というのも、節税対策にもお金がかかりますし、ほとんどの節税対策は減った税金以上にお金が出ていくので、資金繰りはより厳しくなるからです。
しかし、そういった状況でも唯一おすすめできる節税対策が、小規模企業共済です。
なぜなら小規模企業共済は、節税効果が高いだけでなく、掛金の7割~9割を借入できる貸付制度の使い勝手がとても良いので、節税対策をしながら運転資金の確保までできる唯一の節税対策だからです。
そこで今日は、小規模企業共済の節税効果や貸付制度、加入資格などについてわかりやすく解説していきます。
目次
小規模企業共済とは?
⼩規模企業共済は、小規模企業の経営者や役員、個⼈事業主などのための、積み⽴てによる退職⾦制度です。
国の機関である中⼩機構(独⽴⾏政法⼈ 中⼩企業基盤整備機構)が運営しています。
毎⽉掛⾦(1,000円~7万円)を積み立て、解散・廃業時や65歳以上になった場合などに、積み立てた金額+αを共済⾦として受け取ることができます。
また、掛金は500円単位で増額または減額できますので、無理のない範囲で掛け続けることができます。
小規模企業共済の節税効果
掛金は全額、小規模企業共済等掛金控除として所得控除され、その分経営者や個人事業主の所得税・住民税が安くなります。
(法人の経費になるわけではなく、経営者個人から所得控除されます。)
例えば所得税・住民税を合わせて30%納税している人であれば、掛金の上限月7万円、年間84万円を積み立てた場合、その30%の252,000円税金が安くなります。
掛金を支払った年に控除が受けられますので、年末近くに加入した場合でも、1年分の84万円を年内にまとめて前納すれば、その年に84万円の控除が受けられます。
共済金を受け取ったとき
一方で、逆に積み立てた共済金を受け取るときには、税金はあまりかかりません。
⼀括受け取りであれば退職所得、分割受け取りであれば公的年⾦等の雑所得という取り扱いになるのですが、これらの所得はもともとあまり税⾦がかからない計算⽅法になっているからです。(退職⾦や年⾦などの⽼後の資⾦に重い税⾦をかけないため)
☆各所得の計算方法
・退職所得…(収入金額-退職所得控除額)×1/2
・公的年金等の雑所得…年金額-公的年金等控除額
積み立てたときは税金が安くなって、受け取るときに税金があまりかからないのであれば、毎月コツコツ貯金するより、小規模企業共済を使った方が絶対お得ですよね。
iDeCoや国民年金基金との違い
ただし、iDeCoや国民年金基金も掛金は全額所得控除されますし、受け取るときも退職所得や公的年金等の雑所得となるため、節税効果としては大差ありません。
それでも小規模企業共済を一番おすすめできる理由は、万が一積み立てたお金が必要になったとき、解約や貸付制度によってお金を引き出せるため、リスクが低いからです。iDeCoや国民年金基金はあくまで年金制度ですので、最低でも60歳以上にならないとお金は受け取れません。
解約手当金について
小規模企業共済を任意解約した場合の解約手当金は、掛金納付月数が20年未満の場合は掛金合計額を下回り、7年未満の場合は掛金合計額の80%しか受け取れません。(1年未満の場合は受け取れません)
とはいえ、解約手当金は一時所得という取り扱いになるのですが、一時所得も収入の1/2以下の金額にしか課税されません。
積み立て時に税金が安くなっていることも考えると、仮に掛金合計額の80%しか受け取れなくても、それほど損はしないでしょう。
貸付制度について
掛金の7割~9割を借入できる貸付制度ですが、すぐに借入れできる一般貸付(利率1.5%)と、売上減少時や新規開業時などに低金利で借入れできる特別貸付(利率0.9%)の2種類があります。
特に使い勝手が良いのが一般貸付の方で、必要書類さえ提出すればすぐに借入れできる上に、返済期限が来ても手続きすれば借り換えができるため、1.5%の利子だけ支払っていればずっと借り続けることができます。
金融機関の当座貸越契約と似ていますが、借入枠の範囲内で自由に借入ができる当座貸越は便利な反面、審査が厳しく借入枠の金額も小さい傾向があります。
似たようなことがほぼ無審査でできて、掛金に応じて借入限度額も増えていく一般貸付が使えるのは、小規模企業共済の知られざるメリットです。
一方で特別貸付の方は、利率は0.9%に下がるものの、借入金額に応じて借入期間(概ね3年か5年)が定められており、借り換えはできません。
また、審査に必要な書類が増え、審査にかかる期間も長くなるため、使い勝手は一般貸付の方が上でしょう。
加入資格について
次のいずれかに該当する場合などは、小規模企業企業共済に加入できます。
☆加入資格
・建設業、製造業、運輸業、宿泊業、娯楽業、農業など…常時使用する従業員の数が20人以下の個人事業主または会社等の役員。
・卸売業、小売業、サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)など…常時使用する従業員の数が5人以下の個人事業主または会社等の役員。
・上記に該当する個人事業主が営む事業の経営に携わる共同経営者(個人事業主1人につき2人まで)。
※一部省略していますので、詳細は中小機構のホームページをご確認ください。
常時使用する従業員の数には、役員やパート・アルバイト、家族従業員、共同経営者などは含まないので、これら以外の正社員の数を数えてください。(正社員とパート・アルバイトは何を境目にして分けたらいいのか?と問い合わせたことがありますが、会社の認識で分けて良いとの回答でした)
ただし、給与所得者で副業で上記の事業をしている場合や、社団法人、財団法人、NPO法人などの直接営利を目的としない法人の役員などは加入できません。
簡略化して解説していますので、詳しい加入資格は次の共済サポートnaviをご確認ください。
↓
☆共催サポートnavi:小規模企業共済に加入をご検討中の方へ
https://kyosai-web.smrj.go.jp/skyosai/index.html
加入手続きについて
小規模企業共済の加入手続きについても簡単に触れておきますが、オンライン手続きか窓口での手続きがあり、それぞれ次のような流れになります。いずれもそんなに難しい手続きではありませんし、専門家に頼まなくても自分でできるレベルです。
わからないことがあれば中小機構のページの一番下の方に記載されているお問い合わせ先(共済相談室)に電話で質問してください。
オンラインでの加入手続き
次の共済サポートnaviの「小規模企業共済オンライン 加入受付サービス」ページから、「小規模企業共済 加入手続きへ」→「メールアドレス登録」と進んで手続きしてください。
↓
☆共済サポートnavi:小規模企業共済オンライン 加入受付サービス
https://kyosai-web.smrj.go.jp/online/describe/index_01.html
窓口での加入手続き
次の共済サポートnaviの「加入をご検討中の方へ 小規模企業共済とは」のページから、「手続きの流れ」をクリックし、4問程度の簡単な質問に回答していけば、書類での手続きの流れや資料請求フォームなどが表示されていきます。
↓
☆共済サポートnavi:加入をご検討中の方へ 小規模企業共済とは
https://kyosai-web.smrj.go.jp/skyosai/entry/index.html
申込書を記入し、確定申告書の控え(個人)や履歴事項全部証明書・定款(法人)などの必要書類も準備できたら、金融機関か受付団体の窓口で手続きをしてください。(郵送手続きはできないそうです)
まとめ
掛金の全額所得控除によって税金を減らせるメリットに負けないぐらい、いざとなったら貸付制度によって引き出せる、運転資金の確保ができるメリットは大きいです。
私たち経営者は、資金繰りさえ何とかなれば、細かい節税テクニックに頼らなくても、自分のビジネスで稼ぐことができますから。
小規模企業共済を活用して、より強いビジネスを築いていきましょう。