コロナが5月に5類に移行したこともあり、税務調査もますます活発に行われているようですので、前回から引き続き税務調査の話をしたいと思います。
税務調査は、必ずしも脱税の動きがありそうな会社ばかりを狙って行われるわけではありません。
例えば新しく設立された法人は、設立から3~5年経つと、確認のために税務調査に入られることがよくあります。
このような特に狙いがない調査になると、よく脱税の手口として使われる部分や、ミスが見つけやすい細かい部分をつつかれることが多いです。
どういう部分がつつかれやすいのか?がわかっていれば、証拠書類をそろえておいたり、ミスが起きないような防止策を考えたり、事前に対策を打つことができます。
そこで今日は、税務調査でつつかれやすいポイントを7つ紹介しますので、ここをつつかれたら弱いな…と思う部分があれば今の内に対策を考えておいてください。
目次
税務調査でつつかれやすいポイント7選
1.売上の計上時期のズレはないか?
利益を減らすために、売上の計上を翌期に遅らせるのはよくある脱税の手口です。
本当に納品を翌期に遅らせたのであれば脱税にはなりませんが、納品は当期中に終わっているのに、帳簿上だけ売上の計上を故意に遅らせた、あるいは経理上のミスで遅れてしまったのであれば問題があります。
そこで税務調査では、請求書や納品書に記載されている日付・金額・商品名と、売上の帳簿を見比べるなどして、このような売上の計上時期のズレがないかが確認されます。
仮にズレが見つかったとしても、修正申告で当期の売上を上げて翌期の売上を下げるだけですので、トータルの税額は大きく変わらないかもしれませんが、過少申告加算税(増えた税額の5%~10%)や延滞税などの追徴税額が大きくなることもあるので要注意です。
2.在庫の計上もれはないか?
利益を減らすために、在庫などの棚卸資産の金額を減らすのもよくある脱税の手口です。
悪意はなくても、決算間際に購入した在庫の計上を忘れるなど、単純ミスも起きやすい項目です。
そこで税務調査では、決算間際の仕入の請求書に記載されている商品が在庫に計上されているかを確認したり、在庫の現物を確認したりして、在庫の計上が正しいかどうかが確認されます。
こちらも売上の期ズレと同様、ミスが見つかって在庫が増えて当期の利益が増えても、翌期以降の売上原価も増えるのでトータルの税額は大きく変わらないことも多いです。
しかし、在庫が売れ残っている場合は翌期以降の売上原価は増えてくれませんし、追徴税額もあいまって納税額が大きくなってしまう可能性は十分にあります。
帳簿棚卸だけですまさず実地棚卸も行って照合するなど、ミスが起こらないような方法を考えましょう。
3.簿外の収入はないか?
簿外の収入、つまり帳簿に載っていない収入がないかどうかももちろん確認されます。
簿外の収入には例えば次のようなものがあります。
・帳簿に記載していない現金売上がある
・廃材を売却して現金を受け取っているが帳簿に記載していない
・帳簿に記載していない口座に売上の入金がある
帳簿に載っていないため気付かれにくそうですが、
・予約状況から現金売上がもっとあることを推測される
・廃材を買い取ってくれる業者に反面調査に行かれる
・社長の個人口座の動きを銀行で照会される
などさまざまな方法で裏を取られます。
また、こういった簿外の収入があった場合は、仮装隠ぺい行為を行ったものとして、最も重いペナルティである重加算税(増えた税額の35%)が課されることも少なくありません。
したがって、税務調査前に簿外の収入の存在に気付いてしまった場合には、バレないことを祈るのではなく自ら修正申告をして、重加算税が課されるリスクを減らしておきましょう。
4.外注費に領収書や請求書がないものはないか?
架空の外注費の計上は最もメジャーな脱税の手口の一つです。
また、従業員と変わらない働き方をしている人に対して、消費税の仕入税額控除を受けるため、あるいは社会保険の加入を避けるために、給与ではなく外注費として支払っているため領収書や請求書がないケースもあります。
したがって領収書や請求書がない外注費の支払があれば、まず架空外注費でないかどうか疑われます。
本当に支払っていることが証明できても、次に実態は外注費ではなく給与ではないかと指摘されます。
何とか外注費であると認めてもらえても、消費税の仕入税額控除を受けるための領収書や請求書の保存がないため、少なくとも仕入税額控除は否認される可能性が高いです。
毎月仕事を依頼している外注先であれば、調査対象である3年間に支払った外注費の合計金額はかなり大きくなることもあり、高額な消費税を追加納付せざるを得ないケースもあります。
仲間内で仕事を依頼するケースでもめんどくさがらずに、領収書や請求書は必ず発行してもらいましょう。
5.親族に支払っている給与は適正額か?
あまり働いていない親族に高額な役員報酬や給与(個人事業主であれば青色事業専従者給与)を支払っているケースもよくあります。
親族が役員であれば、役員は意思決定が仕事なので毎日出社して働いている必要はないとはいえ、取締役会などにきちんと出席しているか?同業他社と比べて報酬が高すぎないか?などが確認されます。
親族が従業員であれば、タイムカードなどで勤務時間は管理されているか?他の従業員と比べて給与水準が高すぎないか?などが確認されます。
身内だからといってひいきせず、なるべく最初から適正だと思える給与の額にとどめておくようにしましょう。
6.交際費に社長の私的利用は含まれていないか?
贈答用の商品券を購入しているが実は社長が私的な買い物に使っていたり、接待とは言えないようなメンバーで飲食やゴルフ通いを繰り返していたり、交際費に社長の私的利用が紛れているケースもよくあります。
調査でも商品券を誰に渡したのかリストの提出を求められたり、何度も名前が出てくる飲食店はどういうときに利用するのか聞かれたり、場合によっては反面調査に行かれるケースもあります。
贈答や接待の相手先や目的、売上につながっているかどうかなどがきちんと説明できれば指摘されても問題はありませんが、何年も経つと忘れてしまうことも多いので、帳簿や手帳に記録を残しておくようにしましょう。
7.印紙の貼り忘れはないか?
売上や経費の確認のために、売上の契約書や注文書、外注先・仕入先との契約書などを確認される際、ついでに印紙が貼られているかどうかもチェックされます。
印紙を貼らなければならない課税文書に該当するかどうかは、文書のタイトルではなく記載されている内容で判断するので、契約書ではなく注文書、覚書、念書といったタイトルでも課税文書になることがあります。
20種類ある課税文書は税理士である私でも覚えきれませんし、課税文書かどうか判断が難しいものもあるので、細かいところですが税務調査で指摘されやすい項目です。
日ごろから契約書を作るときは常に印紙が必要であるかどうかを確認するだけでなく、税務調査前にも契約書のファイルを再確認しておくようにしましょう。