「第一幕で壁にかかっているピストルが出てくるのならば、それなら終幕には銃が発射されなければならない」
(北村紗衣 「批評の教室」 ちくま新書 P.34)
上記の引用は、ロシアの劇作家アントン・チェーホフの作劇術についてまとめたもので、ここからタイトルにある「チェーホフの銃」という概念が生まれたそうです。
「チェーホフの銃」とは、演劇や小説のテクニック・ルールの一つで、「ストーリーに登場するものにはすべて必然性がなければならない」「ストーリーには不要な要素を盛り込んではいけない」というルールです。
特に演劇や映画では、たったの1~2時間で登場人物の人生、ストーリーを描かないといけないので、余計なモノを用意したり、無駄な会話を披露したりしている余裕はありません。
わざわざ壁に銃がかかっているのであれば、その銃は発射される可能性が高く、発射されないとしてもその部屋の持ち主が銃マニアで好戦的な性格であることを表しているとか、何か意味があってそこに置いてあります。
他にも、ヒロインに優しくする男はたいてい口説こうとしていたり、トイレのシーンではたいてい殺人や事件が起きたり(事件でもない限りトイレなんて描かれない)、ストーリーに何かが描かれていれば、それは後の展開に関係があります。
私たちの人生においては、クラスのヒロインに優しく話しかけることはあってもたいてい口説くことはありませんが。笑
演劇や映画においては、そんな無駄なシーンを見せられても、退屈で仕方ないはずです。
前置きが長くなりましたが、この「チェーホフの銃」というルールは、ビジネスにおいても重要なルールです。
ビジネスでもお客さんが来店してから帰るまでの数分~数時間の間で、お客さんに満足してもらわないといけません。
挨拶一つをとっても、どの言葉を選ぶのか、何のためにするのかを考える必要があります。
内装や備品一つ一つをとっても、なぜそれを選ぶのか、何のために用意するのかを考えないといけません。
無駄な会話をしたり、余計なモノを用意したりする余裕はないはずです。
例えば、スターバックスではあえて「いらっしゃいませ」という挨拶はしないそうです。店員とお客さんという壁を作りたくないからだとか。他にも内装は木目調の落ち着いたデザインが選ばれていたり、コーヒーの香りを邪魔しないよう匂いが強い食べ物は置いていなかったり、お客さんがリラックスして過ごせるように、不要な要素は排除する工夫がされています。
逆に高級ホテルで「こんにちは!」なんてフランクに挨拶されても高級感台無しですし、「いらっしゃいませ」と丁寧にお辞儀してもらった方が気持ちが高まりますよね。内装も豪華で煌びやかな方が雰囲気出ますし、見送るときも「いってらっしゃいませ」と丁寧な言葉遣いで見送ってほしいものです。
このように挨拶一つにも必然性を持たせて、余計なモノは排除するというルールを意識して、あなただけのストーリー、ビジネスを展開してみてください。
それだけでオリジナリティ溢れる面白いビジネスができあがるかもしれません。